「介護保険を知っていると、普段の仕事に役立つ!」現場で働く皆さんに少しでもそう感じてもらえるよう、新連載「介護職員のための介護保険の基礎知識」がスタート!
第1回目は、基礎中の基礎「介護サービスの財源」と「介護保険のややこしさ」について解説します。
介護保険とは「老後の安心を支える仕組み」
介護保険って一言で言うと、「老後の安心を支える仕組み」です。例えば年を取って要介護状態になった、じゃあデイサービスに通おう、老人ホームに入ろうとなった時に、全額自己負担となると普通の人は老後の資金が尽きてしまいますよね。だからみんなで保険料を出し合って、介護サービスにかかる費用負担を減らし、誰でもサービスを受けられるようにしましょう、という制度ができました。
介護保険の被保険者は40歳以上。40歳以上のすべての方が保険料を支払い、要支援や要介護状態になった場合、保険料からサービス料が払われる仕組みです。
ただサービスに必要な全ての費用を保険料だけでまかなうことはできません。そこで介護保険の財源は、保険料は50%、そしてもう50%は税金となっています。要するに、年齢に関わらず税金を払っている全ての人が介護サービスを支える一員、ということですね。
なぜ介護保険は難しいのか
介護保険の何がややこしいかというと、第1に、サービス料を決める単位や係数というものが国によって厳密に定められている、というところではないでしょうか。
介護サービスで発生する料金は、介護度や内容等によって細かく定められた「単位」が基準となり、『単位×10円』という式で計算することができます。そしてそこに、地域やサービスによって変わってくる人件費や固定費を反映させた「地域区分」を掛けた金額が、事業者の報酬となります。
単位を決めるのは、介護度や時間、事業所形態だけではありません。他にも細かい規定があります。例えば「事業所と同一の建物に住んでいる人に対して通所介護を行う」場合、車で迎えにいく手間が無いから、その分単位が引かれると定められています。でも、道を一本挟んでいたら減算されないんですよ。ややこしいですよね。
だから「うちは5時間通ってもらって1万円です」といった明確な料金体系を、他業種のように一律で設定することができない。どうしても状況にあわせて、保険内でやりくりするしかないんです。
そして介護保険の分かりにくさを生むもう一つの理由は、「3年に1回介護保険が改正される」こと。要介護者や財源などの現状にあわせて柔軟な変更が必要ということですが、現場からすると「覚えても覚えても、また変わってしまう」という不満が生まれるわけです。
こうした複雑な仕組みになっているから、実際に働く職員はなかなか介護保険を理解できない、理解する気も起きない、という風土が生まれてしまうのだと思います。
介護保険を理解していると様々なメリットが
今までお話ししたとおり、介護保険と介護サービスはきっても切り離せません。ですからサービスを運営する事業者側は、常に介護保険の動向に目を光らせています。しかし上記のような理由から、現場で働く職員は「別に知らなくても仕事をできるから、上の言うとおりにやっておこう」と考えてしまう人が多いわけです。
しかし、介護保険を知ることは、介護職員にも様々なメリットをもたらします。例えば、今まで不満に思っていたことが解消される手だてになるかもしれません。
一つ例を挙げると、通所介護は利用時間も短いため、定められた時間内にやるべきことを行う効率性が重要になってきます。「利用者さんのためにやれることは全部やってあげたい」と思う方は「もっと時間をかければ色々できるのに…」と不満を感じるかもしれませんが、時間をかければそれだけ単位が増えるので、利用者の負担も増えますよね。今月はキャンペーンで割引します、といったイレギュラー対応は許されないわけですから。そう考えると仕事の仕方や考え方も変わってくるのではないでしょうか。
もう一つ、全ての介護職員が知っておくと良い、むしろ知っておかないと損をしてしまう超重要事項が「処遇改善加算」です。これについては次回詳しく解説します。
脇 俊介有料老人ホーム検索サイト『MY介護の広場』相談員。施設への入居を検討されているご本人やご家族の相談を受け、今までの生活スタイルや地域、ご予算などを考慮してその人にあった施設を提案している。
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