介護業界で14年以上のキャリアを積んできた藤井さんに伺う介護の仕事を笑顔で長く続けるためのヒケツ。
前回の身に付けておくべき知識に続く最終回は、役割意識一つで高齢者との関わり方がこんなにも変わる、というお話を伺います。
高齢者の生きた時代背景を知る
―介護の仕事を長く続けるために、介護の知識以外に知っておくべきことはありますか?
高齢者の方が生きてきた時代背景や文化は必ず勉強しなきゃいけないですね。
よく、「うまく介護が出来ない」という人は、おそらく高齢者の今の情報しか知らないからだと思います。 「なぜこの人は今、こういう感情になっているか」をひも解くヒントは、必ず70年、80年のこれまでの人生に隠されているんです。
実は私自身も失敗談があります。元々陸上自衛隊に勤務し、銃を扱った経験もあったのですが、一時期そのことを周りの職員から持てはやされて、私もその気になっていたんです。
ところがある日、ある利用者から「人を撃ったことがあるのか」と、2時間くらいお叱りを受けました。
戦時中に被弾された方だったんです。
銃は人の命を奪うもの。軽率にネタにしてはいけないと、自分の勘違いを恥じました。同時に、戦争体験のある高齢者世代は、私たちとは全く違う時代を生きて、個々に複雑な経験や思いを持っている。その背景や文化をきちんと知らなければと強く感じました。
介護の仕事は人生の図書館を継承する仕事
―高齢者の方から教わることも多いのですね。
「高齢者が一人なくなるのは、図書館が一つ閉鎖されるのと同じ」だと聞いたことがあります。それだけの時代を生きて、豊富な知識と技術を持っている方々なんですよね。
介護職員は高齢者の方のお話を直接聞ける仕事だからこそ、そういった伝統や技術を世の中に伝えることができる仕事でもあると思っています。
日頃の介護の仕事でも、ただ単に「コミュニケーション取らなきゃ」と思わないで、利用者からいっぱい知識を吸収しようという役割を認識しながら関わりを持っていくと、苦にならず、むしろやりがいを感じられるかもしれません。
もっと世の中に出て、たくさんの人から学んでほしい
―介護の現場で長く働きたい方々へ、最後にメッセージをお願いします。
介護の現場で働いている人たちは、今自分がいる会社や職場のごく狭い社会だけで頑張っている人が多いように思います。私が最初の職場を飛び出した時に一番強く感じたのは、それが「とても閉鎖的だった」ということです。
自ら色んな異業種の人と会って話をすると、成功事例を学べたり、その中でいろんなヒントが生まれて、介護の仕事に取り入れることができます。
利用者の方にお話を聞くのでも、プラスアルファスキルを学ぶのでも、何でも良いんです。一歩飛び出して、自分から知る・学ぶ機会を作って、今後の自分の仕事に活かそうとすること。それが介護の仕事を楽しく長続きさせるヒケツだと思います。
藤井 寿和 (合同会社福祉クリエーションジャパン代表)福祉業界に「つながり」をクリエイとするをコンセプトに、介護の現場と異業種をつなぎ、介護サービスの向上のための様々な事業を手掛ける。
社会参加型デイサービス 運営サポート/レクリエーション介護士 公認講師(東日本エリア)
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